(2017 Shaanxi Forum of Quality Control and New Progress of Blood Purification.)

  • 会期:11月24日~26日
  • 会議場:西安市 曲江ホテル
  • 主催:陕西省血液净化质量控制(陕西省血液浄化品質管理センター)
  • 施設代表:西安交通大学第一付属医院腎臓病医院
  • 参加者:川崎忠行(臨床工学国際推進財団)、
  • 神戸幸司、髙橋貢、長尾尋智、柴田昌典(愛知県臨床工学技士会)、
  • 報告者:園川龍樹

はじめに

本年9月に中国の西北地域の5カ省(陝西省・甘粛省・青海省・寧夏回族自治区・新疆ウィグル自治区)における血液透析品質管理センターが中国医学装備協会血液浄化専門委員会と手を組み透析技士の為の連盟を結成した。これらの省では、他の都市部に比べ血液浄化領域の治療に関する発展が遅く、透析技士の育成がままならない現状があった。その要因としてこの地域は上述する5カ省のみで中国全土の約3/1の面積を占めるほど広大な土地を有している。そのため、北京や上海といった都心部で行われる血液浄化における専門領域の教育を受けることが難しい。これらの問題への突破口を見出すべく今回、従前より中国医学装備協会血液浄化専門委員会と交流のある川崎忠行氏と小生および神戸幸司氏、髙橋貢氏、長尾尋智氏、柴田昌典氏の計6名が表敬訪問及び2演題の講演を行った。以下、今後の研鑽につながるよう学会参加における経過を報告する。

24日、約13時間の移動時間を経て西安のホテルへ到着後、中国医学装備協会血液浄化装備技術専門委員会西北分会及び血液浄化西北品質管理連盟によるウェルカムパーティーへ参加し、本邦参加者の紹介及び名刺交換を実施した。中国側(連盟)の代表者:崔如晨(ウィグル地区代表)によりウェルカムスピーチが行われた。まず、初めに血液浄化西北品質管理連盟の詳細についての説明がなされた、当連盟は中国の西北地区5カ省の血液透析品質管理センターの役員により組織され、西北地区全土の透析技士の教育・訓練の実施を主な目的としている。従前、これらの地域ではそのあまりに広大な国土故に透析技士に向けたセミナーや学術大会の実施が困難な状況が続いていた。各地域の大半の透析施設には透析関連機器の管理を担う透析技士が居ない場合が多く、安全な透析医療の提供が困難な状況も存在している。さらには、中国西北地域における血液透析療法の発展は中国の他の地域と比べ歩みが遅く学術的及び実務的な透析技士育成のための礎が整っておらず、日本の優れた透析医療の技術的・学術的な支援を必要としていた。

26日、中国西北地域の血液浄化領域における各代表者約30名との意見交換会を実施した。中国医学装備協会血液浄化装備技術専門委員会の左力氏により挨拶が交わされ、友好関係の構築に関する確認書を締結した。その後の意見交換では活発な質疑が多く本邦における透析技士育成を核とする質問から本邦における臨床での患者監視装置消毒の意義や肝炎に関する陽性患者の区分けについてなど実務的な内容に及ぶものまで多岐にわたりディスカッションした。講演では2演題について講演を行った最初の演題では柴田昌典氏から「日本の透析システムと臨床工学技士の役割について」2演題目は長尾尋智氏から「日本の透析センターについて」どちらの講演においても、聴講者の食い入るようなまなざしが印象的であった。

北京や上海といった都市部では透析技士の認知度は高く、各透析施設に於いて透析技士が常勤しているケースがほとんどである。しかし、この西北部のみならず未だ中国の大半の地域では透析施設に本来安全な透析治療を担保すべき技士が参画できずにいる施設が多くある。これらの地域においてどのような手段で技士を育成し、認知していくかは現時点では各省単位の血液透析品質管理センターや腎臓病学会等にゆだねられているのが現状である。今回、透析技士の育成や認知度の向上には北京や上海といった都市部のみならず、西北部のような種々の問題を抱えている地域においても本邦に於いて30年以上の年月をかけて培ってきた人材の専門領域におけるネットワークの構築、さらには学術的な技士育成のためのツールやコンテンツを有意義に活用していくことが中国における血液透析領域における発展に最大限寄与すると考えられた。